マーダーミステリー(マダミス)とは、プレイヤーが物語の登場人物の一人となり、発生した事件の真相を追究しながら、個々の目的の達成を目指して物語を紡いでいく『体験型ミステリーゲーム』です。

マーダーミステリーは国内のシナリオ数でも4,000作以上あると言われていますが、それもたくさんのマダミス作家がそのシナリオを生み出したからに他なりません。

あなたもマーダーミステリーをプレイするだけではなく、ぜひ自ら制作してみて、創作の楽しさとそれを誰かにプレイしてもらう楽しさを味わってみてはいかがでしょうか!?

この記事では、10作品以上書き上げたマーダーミステリー作家が、マーダーミステリーの作り方を解説します!

この記事はこんな人におすすめ!

  • マーダーミステリーを実際に制作してみたい!
  • マーダーミステリーの作り方を知りたい!
  • 魅力的なキャラクターの作り方を知りたい!

監修者
わいわい

東京・横浜のマーダーミステリー専門店「探偵キャンプ」スタッフ / 初心者のためのマダミスレーベル「探偵アトリエ」作家。 書き上げたマダミスシナリオは10作以上。代表作品は、「事件で一服『ポケットミステリー』シリーズ☕」、「ミステリーハロウィン~表参道の饗宴~🎃」、「横浜周遊2人用マーダーミステリー『あの日の手紙』✉」

マーダーミステリーを制作してみよう!

マダミスの作り方は、教科書的に決められたフォーマットがあるわけではありません。もちろんフォーマットは探せば見つかるかもしれませんが、それはあるマダミス作家さんが自分の考えを基に作ったオリジナルのフォーマットでしょう。

つまり、マダミスの作り方に唯一の正解はありません。その中でも、考え方の1つとしてこの記事でマダミスの作り方について解説します!

実際のマダミス作りに役立つワークも用意しているので、ぜひ挑戦してみてください!

マダミス作りの『起点』を考えてみよう!

マーダーミステリー(マダミス)は、「プレイヤーが物語の登場人物の一人となり」、「発生した事件の真相を追究しながら」、「個々の目的の達成を目指して物語を紡いでいく」というゲームであり、たくさんの魅力がある一方で、その分多くの項目を練る必要があります。

そのシナリオでプレイヤーの心に残したい感情や想いなどの「テーマ」、魅力的な「キャラクター」、推理しがいのある「ミステリー」、ゲーム性の高い「ギミック」、没入できる「ストーリーや舞台設定」など。たくさんの項目がある中で、まずはどこから考えるべきでしょうか?

筆者の考えで言えば、マダミスの”起点はどこでもいい”です!

「プレイヤーにこんな感動を味わってほしい」というテーマ起点でもいいですし、「こんなキャラクターが暴れまわるストーリーを描きたい」というキャラクター起点でもいいですし、「こんな舞台設定のマダミスだったら面白そう」という舞台設定起点でもいいです。

何よりも大切なのは、あなたの『こんなマダミスを作ってみたい』というポイントをマダミス作りの起点にしていくことです。マダミス作りは考えるべき項目が多岐に分かれますが、そんな起点を基に他の項目を考えていけばよいのです。

★ワーク★あなたのマダミスは、どこから?

マダミス作りの起点となる、「こんなマダミスを作ってみたい」を自由に考えてみましょう!
ストーリーのワンシーンでも、動かしたいキャラクターの造形でも、奇抜なギミックでも、仰天なトリックでも!

考えるのが難しい人は、以下のヒントも参考にしてみてください!

  • プレイヤーにどんな感情を味わってほしい?
  • 今まで最も面白かったマダミスの魅力的な要素は何だった?
  • どんなマダミスだったらプレイしてみたいと思う?
  • どんなシーンを再現したい?

わいわい

マダミスを作りたいと思う人は、間違いなくマダミスが好きな人でしょう。そして、マダミスが好きならば「マダミスの○○が好き」というポイントが必ずあるはず!そのポイントをマダミス作りの起点にするのがおすすめです!

テーマを考えてみよう!

テーマとは、ここでは「そのシナリオで一番プレイヤーに伝えたいこと、感じてほしいこと」と定義します。テーマはプレイし終わったときにプレイヤーの心に残したい感情をもとに決めます。

テーマ例①誰もが大なり小なり秘密は抱えているもの。それでも嘘をつかずに正直に伝えていくことが結局一番大事だ。

テーマ例②犬から見た世界って、不思議ばかりで好奇心くすぐるものになっていると思う。実際にプレイヤーに犬になってもらって、その世界を体験してほしい!

テーマが決まっていないシナリオであれば、「この作品まあ面白かったけど、結局何だかよくわからなかった」という感想を抱かれかねません。

先ほどマダミスの起点は何でもOKと申し上げましたが、起点の次に取り組むべきはテーマ設定です。なぜなら、テーマが決まれば何が中心のマダミスになるかが決まり、それを基にキャラクターやストーリーやミステリーの詳細や重要度の比率が決められていくからです。

この『テーマ』こそがマダミス作りの起点ではないかと主張する方もいらっしゃるかもしれませんが、筆者はより自由度高く「マダミスのここが面白い」と作者が感じるポイントからマダミス作りを始めてほしいと思っているので、テーマ作りを起点の次に置いています。もちろん、そのテーマが起点になることもあるでしょう。

★ワーク★テーマを考えてみよう!

どんなテーマのマダミスを作りたいかを自由に考えてみましょう!

考えるのが難しい人は、以下のヒントも参考にしてみてください!

  • プレイヤーにどんな感情や体験感を与えたい?
  • そのシナリオを通過することで、プレイヤーにどんな変化を起こせればいい?
  • 自分がそのシナリオを通して、プレイヤーにどんな想いや言葉を伝えたい?
わいわい

X(旧Twitter)で発信するイメージで、140字くらいにまとめてみましょう!

キャラクターを制作してみよう!

魅力的なキャラクターもマダミス作りの重要項目の1つ!マダミスはプレイヤーが登場人物を演じるので、どうせならだれもが魅力的なキャラクターを演じてみたいと思うはずです。

ここでは、キャラクターの作り方について解説します!

キャラクターの性格を考えてみよう!

さっそくですが、以下の4人のキャラクターを見て何を感じますか?

和也…冷静沈着で、周りを見て客観的な意見が出せる。

俊樹…頭が良くて、学校の成績は常にクラストップ!

武雄…普段は寡黙で、じっくり考え事をする。

茂人…堅苦しい性格で、いつも無表情。

わいわい

みんな違うキャラのはずなのに、なぜか似たようなイメージを持ってしまう…名前に特徴もなくて誰が誰なのか覚えにくい…。

次に、こちらの4人のキャラクターを見て何を感じますか?

春人…クラスのリーダー。普段から口数は少なく、好奇心旺盛で何にでも挑戦する。

夏美…クラス1の美人。無駄が嫌いで決断力があり、相手を思いやる優しい心の持ち主。

秋子…クラス1のインテリ。明るくお調子者で、周りとは群れない一匹狼。

冬樹…不登校ぎみ。世話好きで親しみやすく、競争心旺盛な性格。

わいわい

名前で区別しやすくなって、それぞれ性格も違うけど、なんとなくキャラクターのイメージを持ちにくい…。

マーダーミステリーは複数の登場人物を短時間でインストールして、それをプレイヤーが演じる必要があります。キャラクターを作る際は、はっきりわかりやすく解釈がズレないキャラクターを作る必要があります。

長尺のストーリーであれば複雑な性格を描いた方がエモいケースもありますが、短い物語であれば「熱血野郎は声がうるさくてアホで猪突猛進」「メイドさんは敬語を使っておしとやかで品がある」というように、ステレオタイプ的な性格にした方がよいでしょう。

(例外的に、「ニコニコおおらかな人物が実は冷徹なサイコパス殺人鬼だった」「荒くれ者の一匹狼ヤンキーが雨に濡れる子犬に傘をかけてあげていた」など、隠れた背景と一緒にイメージとは真逆の性格設定をするのは大いにありです)

ステレオタイプ的な性格を設定するにあたって、ソーシャルスタイルの考え方を使うと非常に便利です。

ソーシャルスタイルとは、人間の個性や行動の傾向を4つに分けたもので、「意見を主張する⇔聞く」「感情を表す⇔抑える」の2軸を用いて4象限で表されます。

・アナリティカル:冷静沈着、物静か、頭が良い、口数が少ない、論理的、一匹狼

・ドライビング:無駄が嫌い、仕切り役、競争心旺盛、行動が早い、意見をはっきり言う、決断力がある

・エミアブル:親しみやすい、優しい、競争が嫌い、世話好き、周りに合わせる、聞き上手

・エクスプレッシブ:明るい、お調子者、好奇心旺盛、直観的に動く、騒がしい、気分屋

それぞれの傾向特徴を見るだけでもどんなキャラクターかイメージが湧いてきますね。4人用マダミスであればキャラクターそれぞれにこの通りの特徴を当てはめればいいですし、5人以上のキャラクターがいてもベースはこのソーシャルスタイル理論を用いればよいでしょう。

また、そのワードで多くの人が抱く共通のイメージも上手く活用しましょう。

・リーダー:熱血で明るく正義感がある仕切りたがり

・イケメン:クールで言葉遣いもカッコいい。優しいorちょっと高圧的

・スポーツマン:真面目で努力家でさっぱりしている。

・オタク:暗めでぼそぼそしている。好きなものにはテンションが上がる。

・優等生:敬語で眼鏡をかけていてたくさんの知識を披露してくれる。

・ドジっ子:好奇心旺盛でよく1人で突っ走ってしまう。

・ギャルやチャラ男:雰囲気が軽くて、ノリがよくとにかく毎日楽しそう。

わいわい

探偵、教授、執事、警察のように、役職や職業のイメージからキャラ設定してもいいでしょう。

キャラクターの背景や役割を考えよう!

マーダーミステリーは、映画やドラマとは違い、特定のキャラクターの視点でその物語を体験します。つまり、そのキャラクター視点での物語が面白くないものであれば、どれだけ感動的な物語であったとしてもそのキャラクターを選んだプレイヤーはつまらなく感じてしまいます。

プレイヤーがキャラクター選択の際に知り得る情報は公開情報のみで、どんな物語を体験できるかはほぼ運ゲーなのです。全員がその物語を楽しむためには、キャラクター全員に主人公級の面白みを持たせることが重要です。

  • キャラクターに、物語に積極的に関与する強い動機を持たせよう。

単に殺人事件を解決しようというだけでは、そのキャラクターが物語に積極的に関与する理由としては乏しいです。なぜそのキャラクターがそこまで必死になって目標を達成しようとするのか、納得する背景・動機があれば、よりプレイヤーは能動的に物語に没入していけるようになります。

動機の例としては、正義、友情、色恋、お金、復讐、野望、使命、洗脳…など

一般的にそう感じるだろうというものよりも、そのキャラクターだからこそ動くような動機にできるととても良いです。また、プレイヤーがより積極的にプレイ関与するように、プレイ次第によって満たせられるかどうかが変化するような動機だとなおよいでしょう。

  • ストーリーへの介入度を全員同じくらい持たせよう。

事件の解決であったり、ストーリーへの変化であったり、より自分自身が介入できる方がプレイヤーは物語に積極的に参加するようになります。もしキャラクターによってこの介入度に大きな差があれば、満足度は選んだキャラクターによって大きく変化することになるでしょう。

厳密に全キャラクターの物語介入度を均一化することはできませんが、介入度をなるべく等しくなるようにすべてのキャラクターにスポットライトを当てましょう。介入度は「ストーリー介入:自分の選択がどれだけストーリーに影響を及ぼすか」「ミステリー介入:真相解明において自分が持つ情報や役割がどれだけ解決に貢献するか」の2項目から考えると良いでしょう。

  • キャラクターに変化を起こそう。

キャラクターを主人公にするポイントは、「変化を自らの手で起こすこと」です。

現状を不幸にさせたり、どうしても叶えたい目標を持たせたりしましょう。それらを物語を通じて解決して、キャラクターに変化を持たせれば、プレイヤーは自分のプレイによって関与した喜びや感動を味わうことができます。

わいわい

事件解決を通じてたとえ「事実」は変わらなかったとしても、キャラクター自身の「捉え方」が変わるだけでプレイヤーはそのキャラクターをプレイしたことに満足することができます。

★ワーク★キャラクターを考えてみよう!

自身のマダミスに登場するキャラクターを自由に考えてみましょう!

考えるのが難しい人は、以下のヒントも参考にしてみてください!

  • そのキャラクターはどのソーシャルスタイルに当てはまる?
  • 肩書、職業、キャラ位置など、そのキャラクターを一言で表すと?
  • そのキャラクターがストーリーを通して得られる変化は?

ストーリーを制作してみよう!

マダミスの基本的な流れは、議論が2回に分かれるものであれば、オープニング(事件発覚)⇒議論①⇒追加情報(さらなる事実が発覚)⇒議論②⇒エンディング(事件の結末)といったものになるでしょう。

マーダーミステリーは物語の登場人物の1人を演じてそのストーリーを味わいます。重要なのは、どのシーンでプレイヤーの感情が大きく動くことになるかです。

事件が発覚したとき、追加情報により衝撃の事実が明らかになったとき、エンディングにてキャラクターが何かを手にした時などがそれにあてはまるでしょう。もちろん他の場面でも衝撃の事実が発覚するシーンがあってもよいでしょう。

ストーリーは、どのようなプレイヤーの感情が大きく動くメインシーンから考えていき、その後にその繋ぎとなるシーンを埋めていくことがよいでしょう。

他にも、オープニングやエンディングでは、以下の点についても考えましょう。

  • オープニング

 →各キャラクターが事件に能動的に関わる理由を明らかにしよう。

 →なぜ警察でなくて自分たちで解決するのか明示しておこう。

 →各キャラクターの表向きの性格や口調を表現しておこう。

  • エンディング

 →仮に推理が失敗したとしても、しこりが残らないエンディングに。

 →どの選択や決断をしても同じエンディングに収束するのもあり。

  プレイヤー目線ではその決断をしたからその結果になったと感じられるように。

このようにストーリー作りを進めていけば、ある程度大雑把な流れはできるかと思います。あとは細部を埋める工程をこなしていきましょう。

《まとめ》
マダミス作りのポイントは、とにかく書くこと!

この記事で載せた内容はあくまで考え方の1つであり、マダミス作りの全てではありません。

マダミスはたくさんの作品が溢れていますが、その全ては作者の試行錯誤で生まれたものです。

こちらの記事を参考にしながらも、マダミス作りに大切なのはとにかく書くこと!

ぜひたくさん書いて、あなただけの物語を作り上げましょう!